・手を上に上げる動作をすると腕がしびれる
・肩、腕、手にしびれや痛みがある
・肩や腕、肩甲骨まわりに痛みがある
・腕の内側や手の小指側に沿って感覚がおかしい
・握力が落ちたり、細かい動作がしにくくなった
こんな症状をお持ちの方。もしかすると胸郭出口症候群かもしれません
胸郭出口症候群とは、上腕や肩の運動、感覚に深くかかわる神経、動静脈が圧迫を受け、神経・血管障害をきたします。
胸郭出口症候群は、首が長く、なで肩の女性に多くみられ、男女比では、1:2〜3とされていますが、手を上に上げて作業をする人、筋トレで筋肉を鍛えまくっている男性に発症するタイプもあります。
誘因・原因
まずは、胸郭出口についてお話しします。
胸郭とは、胸椎・肋骨および胸骨で囲われた部分をいいます。この中には心臓や肺、肝臓などの重要な臓器が多く存在し、臓器を支える役割をになっています。
胸郭の上方には骨や筋肉、動脈、神経などさまざまな組織が複雑に位置しており、胸郭と首の境目あたりが胸郭出口の部分になります。
発症要因として、
・胸郭出口部が生まれつき狭くなっている
・筋肉や腱が骨に付いている部分の異常
・頸肋(第7頸椎の助横突起が人よりも伸びており、過剰肋骨になって圧迫をうける)
・第1肋骨や鎖骨の肥厚変形
・重量物の運搬による肩甲骨への負担
・小胸筋や大胸筋の肥厚
・外傷やスポーツ・作業による過剰な負担
・悪い姿勢による負担
など、さまざまな原因があげられます。
病態整理
さきほど、いろいろな原因はあげさせていただきましたが、圧迫原因により大きく4つに分類することができます。
頸肋症候群
第7頸椎の助横突起が、胎生期の下位頚椎から出ている肋骨が残ってしまったものになります。
残り方も個人差があり、肋骨と同じように胸骨まで至るものや、やや飛び出て終わるものまであります。
筋肉・神経の通るところに1つ骨が余分にあることになり、周囲を圧迫する原因となります。
完全に肋骨のようになっているものに対しては、手術を行う場合もあります。
斜角筋症候群
首の前側から横にかけてある、前斜角筋・中斜角筋という筋肉の異常により、圧迫をうけておこります。
重いものを持つ、なで肩、ハードなトレーニングや、オーバーハンドスポーツなど首の筋肉に負担がかかる作業や動作を行ったり、元々の体型など不良姿勢により、前斜角筋と中斜角筋の隙間が狭くなり発症します。
他にも、冷えや、緊張といった心理的ストレスによっても頚周りや、肩回りの筋肉は緊張し硬くなるため、これらが原因で発症することもあります。
肋鎖症候群
鎖骨と第1肋骨に隙間があり、この隙間を『肋鎖間隙』といいます。この肋鎖間隙に神経や血管が通っており、この隙間が狭くなることによって痛みやしびれなどの症状が出現します。
通常、この肋鎖間隙に骨は存在しないのですが、なかには、『頸肋』とよばれる骨ができてしまう人がいます。この頸肋によって肋鎖間隙が狭くなり、肋鎖症候群となる場合があります。
また、なで肩も原因のひとつで、鎖骨が下がって第一肋骨と近づくために、肋鎖間隙が狭くなりやすいからです。また、重いリュックサックを長時間背負うと、リュックサックの重みで肩が沈み、圧迫しやすくなります。これをリュックサック麻痺といいます。
過外転症候群
過外転症候群は、横から腕を上にあげる外転動作にて、上に外転動作を行うことによって、烏口突起部で小胸筋の圧迫をうけて起こるものを言います。他にも『小胸筋』が硬くなってしまうことによっても引き起こされることから、「小胸筋症候群」とも言われています。
症状・臨床所見
上肢のしびれや疼痛、熱感、冷感、脱力感、握力低下、手指の運動麻痺などがあります。
鎖骨下動脈が圧迫されると手指や腕が蒼白になり、鎖骨下静脈が圧迫されると血液中の酸素が不足してしまい手指や腕などの皮膚や粘膜が青紫色に変化するチアノーゼ様変化が見られます。
検査・判断
当院では、臨床所見を確認したのち、誘発テストで原因部位を特定していくことが多いです。
①モーレイテスト
腕神経叢部を押して、上肢に放散痛が現れたら陽性
②ライトテスト
座った状態で、肘を直角に曲げ、腕を肩の上まであげます。しびれが出たり、手首で脈が弱くなったり、消えたりすれば陽性
③3分間挙上テスト(ルーステスト)
座った姿勢で、肘を直角に曲げ、腕を肩の上まであげ、3分間、グーパーを繰り返します。
手指のしびれや、前腕のだるさが起こり、続けられず途中で腕を下へ下ろすようであれば陽性
④エデンテスト
座った姿勢で、胸を張って両方を後下方に引きます。手首で脈が弱くなるか消失すれば陽性
⑤アドソンテスト
頭部の患側(しびれや痛みがある側)に向き、後ろへ倒して深く息を吸い込み数秒間止めます。その時に、鎖骨下動脈が圧迫され、患側の手首の脈が弱くなるか、消失すれば陽性
施術
当院では、まずは生活習慣指導を行い、症状を増悪させる日常生活動作を避ける様に指導していきます。また、特定部位のストレッチ指導なども行い、圧迫による神経・血管障害を改善させていきます。
施術では、基本施術である徒手療法・運動療法・物理療法を用いて行い、オプション施術では、鍼灸施術・メディセル・ストレッチなどを用いて、過度に緊張した筋肉を緩める施術を行っていきます。また、姿勢が影響により症状が起こっている場合は、背骨骨盤矯正、猫背矯正を行い、姿勢改善をおこなっていきます。
胸郭出口症候群は、日頃のケアを行うことで、予防することが可能なので、日頃のセルフストレッチや、整骨院での定期的なケアをおすすめいたします。
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