スポーツで頻度の高いケガのひとつに、足関節の捻挫があります。
捻挫とは
関節にかかる外力によって、関節を支えている靭帯や関節包といった組織が損傷すること
特に、内反捻挫という足首を内側に捻った時に、足関節の外側の靭帯を痛めるケースが多く、スポーツだけでなく、日常生活でも割と起こることの多いケガで、段差につまずくなどしても起こります。
症状によっては軽視されがちな足関節捻挫ですが、放置せずにしっかり治療をおこなうことで、予後が良好になりますが、放置してしまうと、場合によっては、靭帯や関節包が緩んだ状態で治り、捻挫癖を起こす可能性があります。
今回は、足関節捻挫を理解して、適切な処置をおこなっていきましょう。
原因
スポーツや日常生活で、足を捻ることによって、足関節に強い外力が加わり、関節を支えている靭帯や関節包が損傷したことによって起こります。
病態整理
足関節捻挫には、内反捻挫と外反捻挫があり、割合としては内反捻挫の方が多いです。
内反捻挫
内反捻挫は、足関節の内転・回外・底屈動作が組み合わさった動きになります。
捻挫では、内反捻挫が多く、理由としては、足関節が横方向では、外側よりも内側の方が大きく動きやすい構造になっており、下腿の骨には脛骨と腓骨の2つの骨があるが、腓骨の方が脛骨より長いため、足首は回外しやすい構造になっています。また、外側にある前距腓靭帯(ATF)は強度が弱いということもあり、内側に捻った時に、痛めやすくなっています。
靭帯損傷では、前距腓靭帯が一番多く、次に踵腓靭帯、後距腓靭帯もまれにあります。
また、捻挫をした場合は、上記3つの靭帯以外に、二分靭帯・第5中足骨の4点の疼痛も確認する。
前距腓靭帯(ATF)/踵腓靭帯(CF)の圧痛や断裂の出現ポイントの確率
ATF 腓骨側30% 中央部13.3% 距骨側 42.5% Elongation 5%
CF 腓骨側35% 中央部10% 踵骨側 50% Elongation 5%
外反捻挫
外反捻挫は、足関節の外転・回内・背屈動作の動きが組み合わさった動きになります。
下腿の骨には脛骨と腓骨の2つの骨があり、腓骨の方が脛骨より長いため、外反する時には、距骨が腓骨に当たるため、捻挫が起こりにくくなっています。また、靭帯も外側の靭帯が3つそれぞれ独立してあるのに対して、内側にある三角靭帯は、4つの靭帯が密接しているため、靭帯の強度が強い為、より捻挫が起こりにくい構造になっています。
注意しておかないといけないのは、、これだけ起こりにくい構造になっているにもかかわらず負傷してしまった場合、非常に強い外力が加わったことになります。そのため、外反捻挫は内反捻挫と比べると起こりにくい怪我でありますが、起こった場合には、腓骨の骨折など、重症化する可能性が高い怪我を起こす可能性があります。
足関節骨折の鑑別重要ポイント
1.体重がかけられない。ヒビが少しでもあると軸圧痛があり、歩行が困難
2.腫れや内出血の確認。内出血は広範囲で出る場合が多い
3.全身症状として、悪寒、吐き気、ぞくぞく感、貧血の確認。ヒビでも起こる可能性高い
4.骨(内くるぶし周辺)の圧痛を確認して激痛があれば可能性高い
これらの症状がすべてあてはまれば、すぐに病院へ受診しましょう。
靭帯損傷の重症度分類
足関節捻挫も靭帯が伸びた程度のものから、完全に切れているものまで、様々で、靭帯損傷の程度によって、Ⅰ度〜Ⅲ度まで分けられています。
靭帯損傷Ⅰ度(軽症)
靭帯の過伸展。内反捻挫では、前距腓靭帯の部分損傷のことが多いです。疼痛、腫れは少なく、歩行も可能なので、ついつい放置しがちになってしまいます。
靭帯損傷Ⅱ度(中等症)
靭帯の部分断裂。内反捻挫では前距腓靭帯の完全断裂をさすこともあります。歩くことはできますが、痛みがあるため、跛行(痛めた足をひいてあるく)することが多いです。
靭帯損傷Ⅲ度(重症)
靭帯の完全断裂。内反捻挫では、前距腓靭帯、踵腓靭帯の完全断裂をさすこともあります。強い痛みと腫れがあり、歩くことも難しくなります。また、関節の不安定感があります。
足関節捻挫の応急処置
足関節を捻挫をしたら、RICEを思い出してください。現在は、損傷した組織を保護できないことから、RICEにProtection(保護)を加えたPRICEと呼ばれる処置、さらに、急性損傷の早期管理として必要以上の固定、安静は悪影響を及ぼすということから、安静(Rest)を、Optimal Loading(最適な負荷)に置き換えたPOLICEという考えが定着していますが、捻挫をして直後に行われる一般的応急処置の場合は、RICEで十分だと思います。そして、なるべく早く、受診して捻挫の治療をおこなっていただくことをおすすめします。
R=Rest(安静)
痛みの出る動作を極力避けて、痛みが出ないように、固定できるものがあれば固定して、動かさないようにします。伸縮性包帯があれば、圧迫と同時に安静固定できるので、おすすめです。
I=Ice(冷却)
ケガの直後は氷で冷やしてください。血管を収縮させて炎症や出血を抑えることで、腫れや痛みが最小限に抑えることができます。
冷やす時間は15~20分程度が目安で、【冷たい】→【痛い】→【あたたかい】→【ピリピリする】→【痛みを感じない・感覚がない】と感覚が変化していくので、「痛みを感じなくなる」まで冷やします。このとき、皮膚の状態に注意しましょう。皮膚が赤くなったらいったんアイシングを中止してください。赤くなくなったらもう一度冷やします。
C=Compression(圧迫)
足首周辺や血管を圧迫し、腫れるのを防ぎます。
伸縮性の包帯があれば、それを使うことをおすすめします。
足首に巻いたあと、アイシングのために使っている氷嚢を患部に当たるように一緒に巻くこともできます。
患部を適度に圧迫するように、包帯は多少きつめに巻くのがいいのですが、腫れの状況によっては、過度に圧迫させてしまう可能性もあるので、注意しながら、足の爪を確認し、血色が悪くなるようなら、圧迫を少し緩めてください。
E=Elevation(挙上)
腫れるのを防ぐため、足首を心臓より高く挙げます。タオルや台などに足を乗せて心臓より高くなるようにして安静を保ちましょう。
整骨鍼灸院たいようでの「足関節捻挫」のアプローチ法
当院では、まず問診・触診を行い、超音波エコーを使って画像判断を行い、骨折の有無を確認します。
その後、状況により、ギプス固定を行なっていきます。
足関節捻挫でのギプス巻きの適応基準
Ⅰ度:前距腓靭帯に圧痛・・・サポーター固定
Ⅱ度:前距腓靭帯、踵腓靭帯に圧痛・・・ギプス固定(キャスト材を使用)
Ⅲ度:前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯、内側に圧痛・・・ギプス固定(ギプスシーネを利用)
ただし、前に同じ足の足関節捻挫をされている場合は、靭帯はすでに切れているので固定の意味をなさない場合があるため、ギプス固定をしない場合が多いです。また、子供の場合は、安静ができないことが多いので、Ⅰ度損傷でも、ギプス固定をして安静保持を行うこともあります。
ギプス固定=松葉付と言うイメージがあると思いますが、当院でキャスト固定を行う場合は、ヒールをギプスにつけるため、松葉杖なくても歩くことが可能です。さらに、荷重をかけることで、筋力低下を最小限に止め、早期回復を促すことができます。
痛みがなくなったら、ギプス固定を外して、サポーター固定で様子をみます。
そして、1週間ほど様子をみて、その後サポーター固定も除去して様子をみます。
日常生活で支障がなければ、スポーツも許可し、さらに様子をみます。
その間の治療は、超音波+低周波、又は低周波+温罨法の治療を行っていきます。
ギプス装着時も、開窓して、そこから電気治療を行うことができます。
足関節捻挫の予後
正しい判断と治療を行えば、予後良好で、スポーツ復帰も可能ですが、固定やリハビリ等が不十分な状態だった場合、足関節の不安定性が残り、捻挫を繰り返し起こす可能性があります。そうなると慢性的な痛みや、変形性足関節症などの後遺症が残る場合があります。
捻挫が繰り返し起こる方は、筋肉を強化させ、足関節の不安定性が起こらないようにする必要があります。
当院では、足関節の矯正を行なって、足関節のバランスを整え、その状態でトレーニングを行っていただくことで、安定しやすい状態をつくることが出来ます。
また、日頃から動かしやすい体を作ることで、アクシデントにも体がうまく対応することができれば、捻挫リスクもさけることができます。
当院では、そういった予防ケアも当院では行っているので、ご相談ください。
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